症例:男性。腹痛。
↕ ホイール / ドラッグ / ←↑→↓ キーでスライス移動
画像所見
遠位回腸および盲腸壁の肥厚と造影効果低下が見られます。
遠位回腸には壁内気腫が見られ、静脈内への少量のガスと腸間膜浮腫を伴っています。
肝内門脈ガス、少量の腹水を認めます。上腸間膜静脈は開存しています。
腹腔動脈起始部の動脈硬化を認めます。
上腸間膜動脈起始部の閉塞または準閉塞を認めます。
下腸間膜動脈は開存しており、比較的太い側副血行路が上腹部方向へ向かい上腸間膜動脈を再建しています。
その他の所見
Th10椎体、左腸骨に溶骨性病変を認め、悪性腫瘍の既往が疑われます。(引用元に記載がないので詳細は不明です。)
胆石、左腎嚢胞、左腎萎縮を認めます。
症例考察
慢性腸間膜虚血の比較的まれな病型であり、腹腔動脈起始部の狭窄、上腸間膜動脈起始部の閉塞、および下腸間膜動脈を主な供給源とする側副血行路による上腸間膜動脈の再建を認める。慢性虚血は主に回結腸領域(回腸遠位部および盲腸)に限局しており、遠位小腸の壁内気腫を伴っている。本症例は上腸間膜動脈バイパス術が数回試みられたが、最終的に遠位小腸の切除術が施行された。
画像解説

- 黄矢印:門脈内ガス
- 赤矢印:Th10椎体の溶骨性病変

- 門脈内ガス

- 黄矢印:静脈内ガス
- 赤矢印:腸管壁内気腫

- 黄矢印:静脈内ガス
- 赤矢印:腸管壁内気腫

- 黄矢印:虚血による浮腫性壁肥厚
- 赤矢印:腸管壁内気腫

- 赤矢印:腸管壁内気腫

- 黄矢印:左腸骨の溶骨性病変
- 少量の腹水を認めます
Case courtesy of Michael P. Hartung, Radiopaedia.org. From the case rID: 88205
門脈内ガス
門脈内ガスは、門脈およびその分枝にガスが貯留した状態です。胆道気腫との鑑別が必要ですが、随伴所見やガスの分布パターン(門脈内ガスでは末梢優位、胆道気腫では中枢優位)を考慮すれば、通常それほど困難ではありません。
病理
原因
従来は「死の前兆」と考えられてきましたが、近年では死亡率や罹患率がそれほど高くない様々な病態においても認められることが知られています。
原因は患者の年齢によって分類されます:
小児
- 臍静脈カテーテル留置
- 壊死性腸炎(NEC)
- 新生児胃腸炎
- 胎児赤芽球症
- 腸管手術後の所見
成人
- 腸管壁の異常
- 腸管虚血(通常、腸管壁内ガスおよび腸間膜ガスを伴う。死亡率75〜90%だが、ガス自体は独立した予測因子ではない)
- 壊死・潰瘍を伴う大腸癌
- 炎症性腸疾患(IBD)
- 消化性潰瘍穿孔
- 腸管腔の拡張
- 医原性の胃・腸管拡張(上部・下部内視鏡処置、浣腸など)
- 麻痺性イレウスまたは機械的腸閉塞
- 急性胃拡張
- 気圧外傷
- 腹腔内敗血症
- 憩室炎
- 感染性大腸炎
- 骨盤内膿瘍
- 胆嚢炎・胆管炎
- 虫垂炎
- 出血性膵炎
- 機序不明
- 腸管気腫症
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- コルチコステロイド使用
- 糖尿病
- 下痢
- 心肺蘇生
画像所見
単純X線
肝臓や肝臓に向かう血管に投影される、樹枝状の透亮像。
超音波
門脈内のガスは通常、門脈内腔に高エコーの可動性フォーカスとして描出されます。ドプラ超音波では、ドプラスペクトル波形のベースラインの両側に鋭いスパイクが認められます。
CT
単純X線と同様に、肝臓・門脈およびその分枝に樹枝状の低吸収域(ガス)として描出されます。血管壁とガスの界面でストリークアーチファクトが生じることがあります。肝内門脈のガスは末梢優位に分布するのが典型的で、胆道気腫による中枢優位のガスとの鑑別に役立ちます。
D’Souza D, Bickle I, Portal venous gas. Reference article, Radiopaedia.org (Accessed on 29 May 2026) https://doi.org/10.53347/rID-1913
参考記事
腸管壁内気腫(腸管気腫症、嚢状腸管壁気腫)とは?CT画像診断のポイントは?
本記事で使用している画像は、Radiopaedia.org のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づき掲載しています。
Case courtesy of Michael P. Hartung, Radiopaedia.org. From the case rID: 88205
本記事の画像や記事を引用・転載する際は、上記と同じクレジット表記をお願いします。商業目的での使用はRadiopaedia.orgのライセンス条件により禁止されています。
本記事では画像の一部のみを引用しています。すべての画像をご覧になりたい方は、以下のリンクからご確認ください。


コメント