症例1:80歳 男性。1日続く下腹部痛。
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画像所見
小腸の拡張を認めます。骨盤正中には造影効果の低下した小腸ループを認め、腸間膜には脂肪織濃度上昇を伴っています。下図の矢印の部分で beak sign を認め、closed loop を形成しています。絞扼性イレウスの所見です。絞扼部位からS状結腸間膜ヘルニアが疑われます。

Case courtesy of Bruno Di Muzio, Radiopaedia.org. From the case rID: 20678
症例2:55歳 男性。腹痛と嘔吐。
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画像所見
小腸の拡張を認めます。骨盤左側に閉塞点があり(図矢印)、S状結腸背側に closed loop を形成しています。閉塞部の位置から、S状決腸間膜ヘルニアが疑われます。closed loop に壊死や虚血を疑う所見は指摘できませんが、否定はできません。



Case courtesy of Mohamed Saber, Radiopaedia.org. From the case rID: 228331
S状結腸間膜ヘルニア
S状結腸間膜ヘルニアには3つのタイプがあります。
3型はいずれもS状結腸間膜に関連する内ヘルニアですが、「腸管がどこに・どう入り込むか」で区別されます。S状結腸間膜は右葉(前葉)と左葉(後葉)の2葉からなる扇形の構造で、この2葉との関係が分類の鍵になります。
① S状結腸間膜窩ヘルニア(intersigmoid hernia) S状結腸間膜の後腹膜付着部にある正常でも存在しうる陥凹(intersigmoid fossa/S状結腸間膜窩)に腸管が入り込むタイプ。正常でも存在し得るIntersigmoid fossaに入るもので、ヘルニア嚢(sac)を伴います。今回の症例は2つともこれに該当します。
② S状結腸間膜裂孔ヘルニア(transmesosigmoid hernia) S状結腸間膜の左右両葉の貫通性の欠損部に腸管が嵌頓し対側腸間膜に脱出するタイプ。両葉を「貫通(trans-)」する裂孔を通るため、ヘルニア嚢を伴わないのが特徴です。
③ S状結腸間膜内ヘルニア(intramesosigmoid hernia) S状結腸間膜の一葉のみ腹膜が欠損し間膜内に入るタイプ。片方の葉のみが欠損し、腸管が2葉の「間(intra-=間膜内)」にとどまるため、ヘルニア嚢を伴います。
簡潔にまとめると、入る場所がそれぞれ「既存の窩(①)」「両葉を貫く裂孔→対側(②)」「片葉欠損で間膜内(③)」という違いで、嚢の有無は①あり/②なし/③あり、となります。
頻度については報告にばらつきがありますが、ある報告ではそれぞれ,①24%,②18%,③57%とされています。
S状結腸間膜裂孔ヘルニアは、他の2つと比較して緊急開腹手術の割合は高く、嵌頓腸管長が長く、腸管壊死の頻度が高い傾向があるようです。
待機的手術を行うかどうかは、身体所見やCTにおける嵌入腸管の造影効果や腸間膜脂肪組織濃度上昇・壁内ガス・壁肥厚の有無、血液生化学所見などから慎重に評価することが重要です。
参考:術前診断し腹腔鏡下に整復したS状結腸間膜窩ヘルニアの1例
症例2のように嵌頓腸管に虚血所見を伴わない場合、単純性イレウスと診断される可能性があり、注意を要します。本稿が皆さまの読影力向上の一助となれば幸いです。
なお、内ヘルニア、S状結腸間膜ヘルニアの嵌頓部位については、以下の図をご参考ください。


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