【CT解説】急性硬膜外血腫による鉤ヘルニアとカーノハン切痕

頭部

【症例】

35歳男性。右側頭部打撲。意識消失前に左片麻痺が出現。

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Case courtesy of Andrew Dixon, Radiopaedia.org. From the case rID: 32395

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Uncal herniation with Kernohan phenomenon axial
WW: 80 / WL: 40
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CT slice
Uncal herniation with Kernohan phenomenon coronal
WW: 80 / WL: 40
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CT slice
Uncal herniation with Kernohan phenomenon bone
WW: 80 / WL: 40
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右側の頭皮血腫、および頭蓋骨/右側頭骨錐体部の骨折を認めます。また、対側損傷(コントラクー)として左側大脳凸面分に急性硬膜下血腫が生じており、それによる著明な占拠効果が、正中偏位、左鉤ヘルニアを引き起こしています。

鉤ヘルニアは重度であり、左側脳室下角が小脳テント切痕の下方に下降している所見から、その存在が明確に確認できます。

少量の外傷性くも膜下出血も認められ、右側頭葉には小さな脳内出血が散見されます。右側頭骨錐体部の骨折に加え、蝶形骨洞内に血液が貯留しており、これは他の頭蓋底骨折の存在を示唆しています。

骨条件:右側側頭骨錐体部の縦骨折が主体で、耳小骨連鎖は完全に断裂しています。左側は正常な解剖学的構造が良好に確認できます。 


緊急開頭術後

CT slice
Uncal herniation with Kernohan phenomenon coronal post emergency craniectomy
WW: 80 / WL: 40
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緊急の左開頭術および硬膜下血腫除去術施行後。開頭部位からは、わずかな脳の脱出(外ヘルニア)が認められます。正中偏位および鉤ヘルニアは消失している一方で、脳内出血のサイズと数は増大・増加しており、加えてテント上や右大脳凸面沿いにも硬膜下血腫が認められます。このように、頭蓋内圧上昇による圧迫効果が解除された後に、脳内出血が拡大することは一般的によく見られる現象です。

重要な点として、中脳の右側に低吸収域と点状出血の可能性が認められます。これは、左側の鉤ヘルニアが存在していた際、中脳の右側が小脳テント縁に押し付けられたことで生じたものであり、意識を失う前に患者に生じていた左片麻痺の原因を説明するものです。

画像解説

左側頭葉内側が右側に偏位。正中まで突出している。

左鉤ヘルニアが明らか。

赤矢印は側脳室下角で、側頭葉内側が小脳テント切痕の下方に下降している。

主に右側頭骨に骨折が見られる。

このスライスでは、側頭骨の縦骨折があり、耳小骨連鎖は離断している。

側頭骨の縦骨折に加えて、横骨折も見られる。側頭骨混合骨折。

正常側では、顔面神経管がはっきりと見えますが、損傷側では不明瞭なので、顔面神経管の損傷があるかもしれません。

中脳右側に低吸収域を認め、左鉤ヘルニアにより小脳テント縁に押し付けられたことで生じた損傷(カーノハン切痕)。

右側頭葉に血腫を認める。

カーノハン切痕の点状出血疑い


用語解説(要点)

内容をより深く理解していただくための補足です。

  • 対側損傷:コントラクー(Contrecoup)とも呼ばれています。 衝撃を受けた側の反対側に損傷が生じる現象です。
  • 占拠効果(Mass effect)と正中構造の偏位: 血腫が脳を強く圧迫し、本来真ん中にあるべき脳の構造が反対側へ押しやられている状態です。
  • 鉤ヘルニア(Uncal herniation): 側頭葉の鉤部が強い圧力で本来の場所からはみ出してしまう現象で、生命維持に関わる脳幹を圧迫する可能性がある非常に危険な状態です。
  • 蝶形骨洞の血腫: 鼻の奥にある空洞に血が溜まっていることから、頭蓋骨の底(頭蓋底)に骨折があることを示しています。

カーノハン切痕と現象のメカニズム

  1. 原因(切痕):片側の重度な脳ヘルニア(主に鉤ヘルニア)によって、中脳が反対側へ強く押しやられ、反対側の大脳脚が硬い小脳テント縁に擦り切れるように押し付けられます。この時にできる中脳の凹みや損傷自体をカーノハン切痕と呼びます。
  2. 結果(現象):損傷した反対側の大脳脚を通る運動神経(錐体路)は、その下の延髄で交叉して元の側(病変側)へと向かいます。その結果、本来の病変と同じ側に麻痺が出現します。これがカーノハン現象です。

臨床的なポイント

  • 偽性局在徴候 (False localizing sign): 本来、左側の血腫なら右麻痺があるはずなのに、左麻痺が出ているため「右側に原因があるのでは?」と臨床医を誤認させる可能性があるため、こう呼ばれます。
  • 重症度の指標: この現象が起きているということは、脳が中脳を反対側のテント縁に強く押し付けていることを意味するため、極めて切迫した脳ヘルニアの状態であることを示唆します。

カーノハン現象を見た時は、緊急除圧術が必要です。中脳にカーノハン切痕(器質的損傷)が完成してしまうと、術後に血腫を除去してヘルニアが改善しても、麻痺や意識障害が後遺症として残るリスクが非常に高くなります。カーノハン現象の徴候を早期に捉え、不可逆的な損傷に至る前に手術を完遂することが、生命予後および機能予後の改善に直結します。

参考:

急性硬膜下血腫術後の同側片麻痺に対し MRI で Kernohan’s notch を確認できた 1 例


記事で、「鉤状回ヘルニア」と記載していましたが、正しくは「鉤ヘルニア」でした。訂正してお詫びいたします。

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